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ディープフェイクで離婚の証拠も疑われる時代に スクショだけでなく元のデータを残す理由

ディープフェイクで離婚の証拠も疑われる時代に スクショだけでなく元のデータを残す理由

カナダ・オンタリオ州の地域ニュースサイト「Durham Post」は2026年10月17日、AIで写真や声、メッセージを本物らしく作れるようになったことで、離婚などの裁判に出されるデジタルの証拠が本物かどうかを問われる場面が増えるとする、外部からの提供記事を掲載しました。(出典①)

夫婦のやり取りのスクリーンショットや留守番電話の声も、見た目や聞こえ方だけでは本物と言い切れなくなりつつあります。

この記事でわかること

  • ・AIの偽物が、離婚などの裁判の証拠にどう関わるのか
  • ・カナダの法律が、デジタルの証拠を出す人に求めていること
  • ・争いになりそうなときに残しておきたいデータ

「本当に送られたのか」に加えて「本当に本物か」が問われる

記事は、身近な場面を例に挙げています。配偶者の一方が、もう一方がお金を隠していると認めたように見えるメッセージのスクリーンショットを送ってくる。脅すような留守番電話が残る。子どもの養育をめぐる争いに関わりそうな振る舞いが映った動画が出てくる、といった場面です。

2年ほど前なら、こうした証拠にまず向けられた疑問は「それは本当に送られたのか」だったでしょう。記事によると、今は「それは本当に本物か」という疑問も加わっています。AIの進歩で、写真のように見える画像を作ったり、人の声をまねたり、本物らしいメッセージを作ったりすることが、かつてなく簡単になったためです。

ディープフェイク(AIで作った、本物そっくりの偽の画像や動画、音声)は、以前は高い技術が無いと作るのが難しいものでした。記事は、今ではネットで買えるアプリやソフトで作れるようになったと指摘しています。家族の争いでデジタルの証拠に頼る場面が増える一方で、その証拠を改ざんしたり消したりするのは簡単になっているというのが、記事の問題意識です。

カナダでは、証拠を出す側が「本物だ」と示す決まりがある

カナダでは以前から、裁判で使う電子的な証拠の扱いが法律で定められてきました。オンタリオ州の証拠法34.1条は、電子記録を証拠として出そうとする人に、その記録が主張どおりのものだと認めることができるだけの証拠を示す責任を負わせています。同じ条文の定義では、データを画面に表示したものや印刷したものなども、原則として電子記録に含まれます。(出典②)

国の法律であるカナダ証拠法にも、同じ形の定めがあります。刑事裁判や、連邦議会の管轄に属する民事の手続きなどに適用される部分の31.1条は、電子文書を証拠として出そうとする人が、その文書が主張どおりのものだと認めることができるだけの証拠を示さなければならないとしています。(出典③)

ただし記事は、これはすべてのスクリーンショットに専門家の鑑定(フォレンジック)が要るという意味ではないとも書いています。そのうえで、AIによってスクリーンショットをめぐる争いは大きく増えるだろうと見ています。

弁護士が重く見るのは、見た目よりも出どころと前後の流れ

記事は外部から提供されたもので(筆者欄は「Supplied」)、オンタリオ州ブランプトン(Brampton)で刑事事件や家族の問題を扱う弁護士3人のコメントを載せています。

刑事事件の弁護士マンビル・ニルワル(Manbir Nirwal)氏は、人は目で見たものや耳で聞いたものを自然と信じてしまうと話しています。本人そっくりの声の録音を聞けば、まずは本人だと思い込んでしまうためです。同氏は「AIは、こうした思い込みを見直し、証拠がどこから来たのかを、これまでよりずっと注意深く確かめることを求めている」と述べています。

そのため、デジタルの証拠が誰によって作られ、どこに保存され、どのように手に入り、裁判所に届くまでに何が起きたのかを、弁護士が知りたがる場面が増えるかもしれないと記事は書いています。前後の流れも大切です。数百通のメッセージが続く会話から3通だけを切り出したスクリーンショットは、会話の全体とはまったく違う印象を与えることがあります。

同じく刑事事件の弁護士グラシシュ・パル・サンドゥ(Gurasish Pal Sandhu)氏が問題にしているのは、声をまねるAIです。記事によると、一部のAIは数秒分の話し声があれば、その人の声をまねられます。

サンドゥ氏は、録音が作られたものだと一方が主張するなら、録音そのものを確かめるだけでは足りないという考えです。録音したとされる機器や元のファイル、録音が作られたときの状況、それを裏づける証拠や打ち消す証拠まで確かめる必要が出てくることもあるといいます。

離婚では、相手の写真や声がもともと手元にたくさんある

記事は、家庭裁判所での離婚の争いが、特にこの影響を受けやすいかもしれないと見ています。夫婦は、2人の関係を記録した大量のデジタルデータを裁判所に持ち込むことが多いためです。強い調子のメッセージが養育の争いの根拠になることもあれば、別居中のお金の取り決めで意見が合わないときに、メールが大切な記録になることもあります。

一方で、別れた夫婦はお互いの写真や家族の集まりの動画、何年分もの音声メッセージを持っていることが少なくありません。記事は、こうしたデータが本物らしい偽物を作るための材料になり得ると指摘しています。

家族の問題を扱う弁護士マンジート・カウル(Manjeet Kaur)氏は、別居の最中にある人に、スクリーンショットの1枚1枚を決定的な証拠だと思い込まないよう呼びかけています。同氏によると、別居の争いでは感情が高ぶりやすく、1通のメッセージが自分の考えのすべてを裏づけているように感じてしまうことがあるためです。そのうえで、AIで簡単に手を加えられるようになるほど、元の資料や前後のやり取りを残しておくことがいっそう大切になるかもしれないと述べています。

スクリーンショットだけでなく、元のデータとやり取りの全体を残す

記事は終わりのほうで、何を残しておけばよいかを挙げています。スクリーンショットを撮ること自体はこれからも続くだろうとしたうえで、できるかぎり元のデータを残すほうが役に立つという考え方です。

  • ・やり取りの全体:アプリのやり取りをまるごと残すと、スクリーンショット1枚よりも前後の流れが伝わります
  • ・元のファイル:写真や動画、音声の元のファイルには、圧縮した版から抜け落ちた情報が含まれていることがあります
  • ・メール:メールには、メタデータ(データそのものに付いている付帯情報)が含まれていることがあります
  • ・機器そのもの:本物かどうかが争われたときは、スマートフォンなどの機器そのものを調べることになる場合もあります

あわせて記事は、法的な目的で人に渡す前に、スクリーンショットを切り取ったり保存し直したりする扱い方にも気を配るべきだとしています。話し手の名前は添えられていませんが、裁判所が何を信頼できる証拠とするかを決めることに変わりはなく、争いになったときは元のファイルや書類を特に注意して残しておくべきだという声も紹介されています。一方で記事は、不利な証拠を「ディープフェイクだ」と言うだけで退けられるわけではないことも書き添えています。

日本の裁判でも、証拠が本物であることを示す決まりがある

日本の民事訴訟法にも、「文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない」という定めがあります(228条1項)。2026年10月20日にe-Gov法令検索で確認した現行の条文では、電磁的記録(データ)の中身を証拠として調べる手続きにも、この定めが準用されています(231条の3)。(出典④)

国は違っても、証拠が本物であることを示す決まりがある点は共通しています。争いになりそうなときは、スクリーンショットだけに頼らず元のデータを残しておき、必要に応じて弁護士に相談するのも一つの方法です。

まとめ

Durham Postの記事は、AIで偽物を作りやすくなったことで、スクリーンショットをめぐる争いが増えると指摘しました。記事に登場したカナダの弁護士たちは、証拠の見た目より、出どころや前後の流れ、元のファイルを確かめることの大切さを語っています。カナダにも日本にも、証拠が本物であることを示す決まりがあります。

争いになりそうなときは、スクリーンショットを撮って終わりにせず、やり取りの全体と、写真・動画・音声の元のファイルを残しておきましょう。法的な目的で人に渡すときは、スクリーンショットを切り取ったり保存し直したりする扱い方にも気を配りましょう。

出典
Fact Check Lab編集部

この記事を書いた人

Fact Check Lab編集部

世の中で話題になっている情報のみならず、生成AIの精度やハルシネーションの検証・分析を行う編集部。誤情報は、意図的な嘘だけでなく、事実の一部が伝わる過程で欠け落ちたり、文脈から切り離されたりすることでも生まれる。だからこそ、疑うことよりも確かめることを大切にする。不偏不党の精神で発信元をたどり、一次情報にあたる。

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