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ファクトチェックとは?ベテラン記者が教える企業コンテンツで確認すべき5つの事実関係

ファクトチェックとは?ベテラン記者が教える企業コンテンツで確認すべき5つの事実関係

2026,07.20

校正・校閲

川口 哲郎

産業専門紙で23年、記者・デスクとして金融・経済・産業・エネルギー・テクノロジー分野を中心に、取材、執筆、編集、校閲に従事。官公庁、金融機関、市場関係機関、企業、業界団体への取材経験があり、一次情報に基づく記事制作を手がけてきた。デスク時代には、記者原稿の事実確認、表記統一、構成・表現の調整、見出し確認などを担当。数字、固有名詞、制度名、企業名、時系列、論理の整合性を丁寧に確認することを得意としている。

AIの普及で、短時間で読みやすい文章を作れるようになりました。構成が整い、語り口も自然な文章が、以前よりずっと手軽に手に入ります。

ただ、文章が自然であることと、書かれた事実が正しいことは、別の問題です。

誤りは、AIが登場する前から起きていました。人が書いた記事でも、数字の桁違いや肩書きの取り違えは起こります。 AIによって文章制作の量と速度が増したいま、確認すべき情報もまた増えています。

企業のオウンドメディアやプレスリリース、ホワイトペーパー、営業資料では、事実の正確さが発信内容への信頼を支えます。 そこで確認したいのが、数字・制度・固有名詞・出典・時系列という5つの事実関係です。

この記事では、「何を確認するか」だけでなく、「どのような記述で立ち止まるか」まで解説します。

この記事でわかること

  • ファクトチェックとは何か(校正・校閲との違い)
  • 企業コンテンツで確認すべき5つの事実関係(数字・制度・固有名詞・出典・時系列)
  • ファクトチェックの基本フロー4段階と、社内でできるセルフチェックの方法

ファクトチェックとは?事実を根拠と照合する作業

ファクトチェックの意味

総務省の「令和5年版 情報通信白書」は、ファクトチェックを「情報の真偽を検証する活動」と説明しています。一般には、すでに公表されたニュースや情報、発言などを対象に、その真偽や正確性を検証する活動を指します。[1]

国際的にも、IFCN(国際ファクトチェックネットワーク)が、公人の発言などの事実性を非党派の立場で検証する活動として位置づけています。[2]

本記事では、この考え方を企業コンテンツの公開前確認に当てはめ、記事や資料に含まれる数字、制度、固有名詞などの事実関係を、根拠となる資料や情報源と照合する作業を中心に扱います。

ここで大切なのは、「もっともらしいかどうか」ではなく、「根拠と一致しているかどうか」を見る点です。文章として自然に読めても、元の資料と照らし合わせると数字がずれている、ということは起こります。読みやすさと正確さは、別の基準で判断する必要があります。

ファクトチェックとジャーナリズムの関係

総務省の「令和5年版 情報通信白書」は、日本でこれまでファクトチェック活動が限定的だった背景の一つとして、新聞や放送などのマスメディアが、取材を通じて組織的に情報を編集・発信し、国民が情報を判断するための情報源として機能してきたことを挙げています。[1]

私自身も記者・デスクとして、記事を世に出す前に事実関係や情報源を確認し、必要に応じて資料や別の情報源と突き合わせてきました。こうした事実確認の考え方は、報道に限らず、企業が発信するコンテンツにも生かせます。

校正・校閲・ファクトチェックは何が違うのか

似た作業に、校正と校閲があります。実務では確認範囲が重なることもあるため、主な確認対象の目安として整理すると、次のようになります。

『新編 校正技術[講座テキスト版①]』では、校正は広い意味と狭い意味に分けて説明されています。印刷・出版実務では、原稿と校正刷などを照合し、文字の誤りや不備を調べて正す作業が中心です。[3]

校閲は、事実関係やデータ、引用の適否、内容の矛盾、不適切な表現など、文章の内容に踏み込んで確認します。[4]ファクトチェックは、個別の事実や主張を、その根拠となる資料や情報源と照らし合わせる作業です。

ただし、実際の業務では、これらがきれいに分かれるとは限りません。校正と校閲の範囲が重なることもあれば、校閲の一環としてファクトチェックを行うこともあります。

記者・デスクとして原稿を確認してきた経験から言えるのは、ファクトチェックは、すべての記述を同じ密度で疑う作業ではない、ということです。数字や肩書き、制度、時点など、「ここは確認が必要だ」という記述で立ち止まる。そこから作業は始まります。

では、企業コンテンツでは具体的にどこで立ち止まればよいのか。5つの事実関係に分けて見ていきます。

企業コンテンツで確認すべき5つの事実関係

はじめに一つ補足します。この5分類は、完全に独立しているわけではありません。たとえば、人名や肩書きを確認する際には、いつ時点の情報かという時系列の問題にも関わります。分類はあくまで、確認の視点を整理するためのものです。

1.数字|「合っているか」だけでなく、精度と条件を見る

数字を含む記述は、特に確認が必要です。「売上高○億円」「○%増加」「市場規模○兆円」「利用者○万人」「過去最高」「国内1位」といった表現が出てきたら、一度止まります。

まず見るのは、単位、桁、対象期間、対象範囲です。実績か予測か、前年比か前月比か、さらに詳細な元資料がないかも確かめます。

記者時代、企業の決算を取材していて気づいたことがあります。同じ決算に関する公式資料でも、数字の示し方が資料によって異なる場合があるのです。

東証の通期決算短信の参考様式(日本基準・連結)では、売上高や営業利益などの業績数値を百万円単位で記載する形式が示されています。 端数処理については、 百万円未満を切り捨てることとされていますが、四捨五入して記載することも認められています。

[5] 一方、私が取材した企業の決算説明用プレゼン資料では、億円単位に丸めて示すケースがありました。

仮の例で示すと、決算短信に営業利益が「32,655百万円(=326億5,500万円)」と記載されていても、説明資料では「327億円」と表示されることがあります。

私が新聞記事を書く際には、プレゼン資料の「327億円」をそのまま使わず、より細かい数字が記載された決算短信まで戻って確認していました。私が在籍していた新聞社では、億円単位で表記する際に億円未満を切り捨てるルールだったため、元の数字が「32,655百万円」(=326億5,500万円) であれば「326億円」としていました。

ここから分かるのは、数字には「正しいか、間違っているか」だけでなく、「どの資料の、どの精度の数字か」という問題があるということです。同じ企業が同じ決算について出した公式資料でも、示し方が同じとは限りません。公式資料を一つ見ただけで、確認が終わるとは限らないのです。

2.制度|正式名称だけでなく、対象と適用時点を見る

制度に関する記述では、対象と適用時点に注意が必要です。「新制度が始まった」「法律が改正された」「○○が義務化された」「企業は○○しなければならない」といった表現です。

正式名称だけでなく、対象者や対象企業、適用条件、例外を確認します。公布日や施行日、経過措置など、時点に関する情報も重要です。

見落としやすいのが、制度や法律に関する時点の違いです。法律の「成立」「公布」「施行」は、それぞれ異なる段階です。内閣法制局の「法律ができるまで」でも、法律案の提出から成立・公布・施行に至る過程が段階的に示されています。成立した時点と、公布された時点、実際に施行される時点が異なることもあります。[6]

そのため、「法律が決まった」とだけ書くのではなく、記事で伝えたいのが成立・公布・施行のどの段階なのかを確認する必要があります。

制度は、あるかどうかだけでなく、誰に、いつから適用されるのかまで確認する必要があります。対象と時点まで見て、はじめて記述の正確さを確かめられます。

3.固有名詞|名前だけでなく、最新の肩書きも確認する

人名や社名、商品名、サービス名、組織名などの固有名詞と、それに付随する肩書きも、確認が必要な記述です。

正式表記に加え、最新の肩書きや役員人事、社名変更、組織再編の有無まで確認します。

デスク時代に特に注意していたのが、年度替わりの企業人事でした。年度の変わり目は役員人事が動くことがあり、肩書きが変わりやすいためです。

たとえば、3月以前に公表された企業リリースに「○○社長」と書かれていたとします。その後、4月1日付の人事でその人物が会長に就いた。この場合、4月以降の記事で過去のリリースだけを見て書くと、「○○社長」と誤って書くおそれがあります。

3月のリリースは、公表された時点では正しい情報です。しかし、4月以降の記事にそのまま使えば、事実と合わなくなります。そのため人名が出てきたときは、過去のリリースだけで済ませず、最新の役員情報や人事発表、そして記事を公開する時点の肩書きまで確認していました。

固有名詞の正しさには、「時点」も含まれます。過去の資料に正しく書かれていても、公開時点の記事にそのまま使えば誤りになることがあります。「誰か」だけでなく、「いつ時点で、どの立場にあるか」まで見る必要があります。

4.出典|出典があるだけでは確認は終わらない

「○○によると」「調査では」「専門家は指摘している」「○○と報告されている」。こうした出典を伴う記述も、確認が必要です。

出典が実在するか、原典かを確かめます。さらに、本文の主張を本当に裏付けているか、調査対象や条件が省略されていないか、引用部分だけで意味が変わっていないかまで確認します。

たとえば、元の調査が「調査に回答した企業の60%」としているのに、本文で「企業の60%」と書けば、対象範囲が変わってしまいます。回答した企業に限った数字が、あたかもすべての企業の数字であるかのように読めてしまうためです。

出典が付いていることと、事実確認が終わっていることは、同じではありません。出典をたどり、その中身まで確かめて、はじめて確認が成り立ちます。

5.時系列|「いつの情報か」が変われば、正しさも変わる

「現在」「最新」「今年」「予定」「開始した」「決定した」「過去最高」。時点にかかわる記述も、確認が必要です。

発表日、決定日、実施日、施行日、調査時点を確認します。記事を公開する時点でも、その情報が有効かどうかを見る必要があります。

たとえば、サービスを発表した日と、実際に開始した日は同じとは限りません。制度を決定した日と、適用が始まる日が異なる場合もあります。「始まった」と書くときも、発表された時点を指すのか、実際の開始時点を指すのかを区別する必要があります。

事実には、「何が正しいか」だけでなく、「いつの時点で正しいか」という問題があります。

ファクトチェックの基本フローは4段階

確認の進め方は、「疑う → 一次情報に当たる → 照合 → 記録」という4段階で整理できます。

1.疑う まず、5項目を含む記述で立ち止まります。すべての文章を同じ密度で確認するのではありません。誤ると意味や信頼に影響する記述を見つけることが、出発点です。

2.一次情報に当たる 次に、企業の公式資料、官公庁の資料、原調査、元の統計など、情報の発信元まで遡ります。ここで注意したいのは、一次情報を見つければ確認終了、ではないことです。その数字の精度、対象、条件、時点まで見て、はじめて確認になります。

3.照合する 本文と元資料を突き合わせます。数字、単位、対象、条件、表記、時点。これらが一致しているかを、一つずつ確かめます。

4.記録する 最後に、何を確認したか、どの資料で確認したか、いつ確認したかを残します。チームでの制作や、AIを使った制作では、確認履歴を残すことで、誰が何を確認したのかを共有しやすくなります。

社内で最低限できる5項目セルフチェック

専任の担当者がいなくても、公開前に自問できることがあります。

限られた時間でセルフチェックするなら、すべての記述を同じ密度で見るのではなく、まずはこの5項目を含む箇所で一度立ち止まります。それだけでも、確認漏れを減らす第一歩になります。

まとめ|正確なコンテンツは「立ち止まる」ことから始まる

ファクトチェックは、情報の真偽や正確性を確かめる活動です。本記事では、その考え方を企業コンテンツの公開前確認に当てはめてきました。

確認すべきは、数字、制度、固有名詞、出典、時系列の5項目です。基本の流れは「疑う → 一次情報に当たる → 照合 → 記録」の4段階です。

AIは、コンテンツ制作を効率化する有効な手段です。ただ、文章を生成することと、そこに含まれる事実関係を確認することは別の工程です。制作の量と速度が増したいまこそ、確認の工程はより重要になっています。

大切なのは、すべてを闇雲に疑うことではありません。数字や肩書き、制度、出典、時点など、「ここは確認が必要だ」という記述で立ち止まり、根拠まで戻る習慣を持つことです。正確なコンテンツをつくる第一歩は、その習慣から始まります。

なお、数字や制度にかかわる記述が多い資料や、影響範囲の大きい発表など、社内の確認だけでは不安が残る場合には、報道機関出身者など事実確認の経験を持つ外部のファクトチェックサービスを活用する方法もあります。

よくある質問(FAQ)

Q1.ファクトチェックと校閲はどう違いますか?

A.校閲は、事実関係やデータ、引用の適否、不適切な表現など、文章の内容全体を確認する作業です。ファクトチェックは、個別の事実や主張を、その根拠となる資料や情報源と照合する作業を指します。実務では、校閲の一環としてファクトチェックを行うこともあります。

Q2.企業コンテンツのファクトチェックは、何から始めればよいですか?

A.まず、数字・制度・固有名詞・出典・時系列の5項目を含む記述で立ち止まり、企業の公式資料や官公庁の資料などの一次情報と照合することから始めます。すべての記述を同じ密度で疑う必要はありません。

Q3.AIで作成した文章にもファクトチェックは必要ですか?

A.必要です。AIは自然で読みやすい文章を生成しますが、そこに含まれる数字や固有名詞、出典が正しいことまでは保証しません。公開前に一次情報と照合し、何をどの資料で確認したかを記録することをおすすめします。

出典

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