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脱毛の翌日に毛穴パックはNG!エステティシャンが語るAI肌相談の限界

脱毛の翌日に毛穴パックはNG!エステティシャンが語るAI肌相談の限界

〜AIが受け取れるのは、お客様の自己申告だけ〜

毛穴が詰まっているのですが、どの化粧品がいいですか。そう打ち込めば、AIはすぐに商品名を挙げてくれます。無料で、スマホ1つで、待ち時間もありません。

ただ、その回答は、あなたが昨日何をしたかを知りません。東京・下北沢で顔の施術に絞ったサロンを14年営む永松麻美氏は、「昨日脱毛して、今日毛穴のパックをやる」ような組み合わせが、実際に肌荒れのリスクを上げると言います。

AIに肌のことを相談するとき、何を伝えれば危険を減らせるのか。どこからは人に見てもらったほうがいいのか。肌を触る仕事を14年続けてきた立場から、その境目を聞きました。

永松麻美

永松麻美

エステティシャン/エステ講師。東京都世田谷区下北沢でエステサロン&スクール「SUHADA」を運営するオーナーエステティシャン兼講師。サロン運営14年目、業界歴は20年近くに及ぶ。初心者からエステサロン開業を目指すための技術・知識スクールを主宰し、美容家としてTV・雑誌等のメディア出演や記事監修も多数行う。著書に『正しい知識がわかる 美肌事典』『シワとりパーフェクトブック』『表情筋ほぐし』など。皮膚理論に基づき現場に根差した指導と、受講生に寄り添い可能性を全力で応援する温かい人柄が支持されている。

「昨日脱毛して、今日毛穴パック」——AIが聞いてこない前提

スキンケアを選ぶときにAIを使う人が、ちらほら出てきました。永松氏は現場でそう感じています。毛穴が詰まっているから何がいいか、と打ち込んで、出てきた商品を買ってみます。そういう買い方が始まっているといいます。

相談の入口がAIになること自体を、永松氏は否定しません。問題にしているのは、入力される情報の量です。

毛穴が詰まっているから何かいい商品はないか、というだけだと、おそらく一般のネットに出回っている情報から回答が来ると思うんです。ですが、その人の肌がすごく敏感だったり、合わない成分を持っていたりするときには、やっぱり少し危ないのではないかなと思います。

そのうえで永松氏が挙げたのは、本人が関係あると思っていない情報でした。

些細なことであっても、たとえば先週脱毛したとか。昨日脱毛していて、今日毛穴のパックをやるというのは、すごく危険なことですので。製品が良かったとしても、やっぱり肌荒れのリスクが上がってしまいます。

脱毛の直後は、肌の状態が普段と違います。そこに、角質や皮脂を強く取り除くケアを重ねてしまいます。単体で見れば、どちらもよくある行為です。危ないのは組み合わせのほうで、そして組み合わせは、本人がその2つを結びつけて考えなければ、質問文に入りません。

AIに肌のことを聞くなら、最低でも次の4つは自分から書き添えます。

  • ・直近の施術歴(脱毛、ピーリング、レーザーなどを、いつ受けたか)
  • ・いま使っている化粧品と、過去に合わなかった成分
  • ・肌トラブルの有無と、その状態が続いている期間
  • ・季節と、その時期に出やすい肌の変化(乾燥しやすい、皮脂が出やすいなど)

一言でいえば、AIは前提を聞いてくれません。前提を出すのは、質問する側の仕事になります。

顔施術中心の小規模サロンで、男性の受け入れは紹介のみだといいます

「私、すごく光ってるんです」——申告と実際がずれるとき

では、前提を丁寧に書き添えれば安全なのでしょうか。ここにもう1つの落とし穴があります。書かれる前提が、本人の主観だという点です。

お客様が思っている主観と、客観的に見た肌の状態は、やっぱり乖離があることがほとんどなんですよね。お客様ご自身は「私、すごく敏感肌でこうなんです」とおっしゃっているんですけど、プロの目から見るとそうではない、ということもありますし。逆に、自分の肌が敏感だということに気づいておらず、「肌、結構強いんです」とおっしゃっているんですけど、客観的に見るとすごく危うい状態だった、ということもあります。

悩みが強い人ほど、そのずれは大きくなると永松氏は話します。

客観的に見るとそれほどテカリはないんですけど、本人はちょっと汗をかいているだけなのに、すごくテカっているんですとおっしゃっていて。AIに聞くとしたら、「私、すごくテカってるんです」と、その方は必ず書きますよね。本人はそう思っていますから。

入力が主観であれば、出力もその主観の上に立ちます。回答そのものが間違っているとは限らず、前提のほうが本人の実感でできています。だとすれば、専門家がしていることの1つは、その実感を客観に戻す作業だということになります。

どのくらい油が出ていて、どのくらい水分量があって、ざらつきがどのくらいあるかとか、やっぱり触らないとわからない部分がありますので。

肌の状態を数値で測る機器もあります。皮膚科などで使われる高性能な肌診断機であれば、専用のカメラと蓄積されたデータをもとに、かなり実態に近い診断が出るといいます。ただ、スマホで撮った自分の写真をAIに見せる程度では、そこまでの精度はまだない、というのが永松氏の実感です。

肌診断機とは
肌の水分量・皮脂量・シミ・毛穴の状態などを、専用のカメラやセンサーで測定する機器です。医療機関や一部のサロンに置かれ、数百万円するものもあります。永松氏は取材で、こうした機器での診断と、スマートフォンの写真をAIに見せることとを、はっきり分けて話していました。

つまり、いまのところ足りていないのは情報の量ではなく、情報を取る手段のほうだということです。

20代では毛穴やニキビ、30代では小ジワや乾燥、シミ、40代以降は表情シワやほうれい線などのたるみ、と悩みが変化していく

遊びで済む美容と、大怪我になる美容

前提として、永松氏はスキンケアを「肌を良くするためだけのもの」とは考えていません。

女性にとってスキンケアは、ただ肌を良くするとか、清潔に保つというだけ以上の意味があるというか。つける時間がすごくいい香りがして、癒されるとか。好きなインフルエンサーの方が使っているものを使うことで得られる気持ちの高揚感とか。それはそれで、すごくいいと思うんです。

問題になるのは、その優先順位を、肌が弱い人やトラブルがある人が採ったときです。永松氏はそこに「悲劇が起こる確率が高い」という強い言葉を使いました。肌が健康な人であれば、夢を買う、楽しみを買う、ステータスを買うという要素も含めて、全力で楽しめばいいのです。ですが肌に問題がある人は、まず健康な状態に戻すのが先だ、という順番です。

では、どこまでをAIに任せてよいのか。この問いに対して、永松氏は言い切りませんでした。境界線は難しい、自分の中で答えだと言えるものがまだない、と前置きしたうえで、1つのラインを示しています。

美容の範囲で言うことでしたら、間違っていたとしても、そこまで大きな怪我をすることはないと思いますので、遊びの延長やエンタメの延長として使うのでしたら問題ないと思います。ですが、皮膚疾患があるとか、皮膚疾患の可能性があるとか、あとはもう、すごく悩んでいて、心を病むほど悩んでいるようなものをAIに頼ってしまうのは、やっぱり大怪我をする可能性があるなと思っています。

分けているのは、テーマの難しさではなく、外したときの被害の大きさです。そして永松氏は、医療の領域についてこう補足しました。

皮膚科の先生が大学などで、医師免許を取るための勉強でやってきた内容は、ネットには載っていませんよね。

学習の元になっていない知識は、出力にも出てきません。これは、AIの精度が上がれば自然に解決する、という種類の話ではないということです。

それでも人がAIに向かうのは、手軽さがあるからです。永松氏はその引力を認めたうえで、判断の基準を1つ置いています。

病院に行くとなると、仕事を半日休んで、足を運んで、お金もかかります。ですが、無料版に聞くのであれば、スマホで打ち込むだけでいろいろ聞けたりしますので、楽は楽なんですけれども。その楽さと引き換えにできないものは、聞かないほうがいいのかなと思います。

責任の所在についても、永松氏ははっきり指摘しています。AIに言われたとおりにやって肌が荒れたと伝えれば、謝罪の言葉は返ってきます。ですが、返ってくるのはそれだけです。

申し訳ございませんとは言ってくれますが、責任を取ってくれることはありませんよね。ですから、過信しすぎないほうがいいなと思います。結局、最後に選ぶのは自分ですし、ちゃんと調べるというのは自分の仕事だと思いますので。
幼少期のニキビとアトピーの経験が、美容の道に入るきっかけでした

奪われるカウンセリングと、残る「触れる」という価値

最後に、AIの精度が今後さらに上がったとき、エステティシャンの専門性はどこに残るのかを尋ねました。返ってきたのは、守りの答えではありませんでした。

私たちの仕事は、AIにすごく取られていく部分も大きいと思うんです。たとえばカウンセリングをするとか、お客様の肌に合う化粧品を選ぶといったことは、今はまだ人がやったほうがいいと私は思っているんですけど、これはもしかしたら、すごく進化したときに取られていく領域だな、というのは感じていて。

そのうえで、残ると見ているものを挙げます。

人に触れるとか、ケアをするとか、実際に触れて、お肌や筋肉に触れて変化を起こしていくということに関しては、たとえすごくよくできたロボットができたとしても、ロボットではなく人に触れてほしいという、その満足感は必ず残っていくと思っています。

この見立ては、業界の中に線を引きます。永松氏は、機械頼りで運営しているサロンや、機械寄りの技術者は淘汰されていくと見る一方、手の技術を持つエステティシャンやセラピストの価値は上がっていく、という立場を取ります。素人が触っても怪我をしない範囲の機械で成り立っているセルフエステも、機械そのものが進化すれば同じ土俵に乗る、という見方です。

そしてもう1つ、残る仕事として挙げたのが「通訳」でした。高性能な肌診断機がさらに進化したとしても、その結果をどう扱うかは別だ、という話です。

出た結果を通訳して、お客様が使いやすい形に要約して伝えて、実際にお客様が生活の中で活かせるレベルにするための提案というのは、やっぱり人なんじゃないかなと思っています。どんなに進化しても、その使い手は人だという部分は、まだまだ変わらないのかなと思います。

ここまでの話には、1本の線が通っています。AIが受け取れるのは、質問した人が言葉にしたものだけだ、ということです。

施術歴を書き添えなければ、AIはそれを知りません。「すごく光っている」と書けば、AIはその申告を前提に答えます。皮膚疾患を疑う所見があっても、写真からは読み取れません。どれもAIの性能が低いという話ではなく、言葉になっていないものは渡っていない、というだけのことです。

だからこそ永松氏は、何かを本気で改善したいときは、人に客観視してもらってから選ぶのが一番だという立場を崩しませんでした。触って分かること、生活を聞いて分かること、季節と組み合わせて分かること。それらはまだ、言葉になる前の段階にあります。

肌の悩みを解決したいとき、順番を間違えないための目安です。

  • ・楽しみのための買い物なら、好きなものを選んでよい(AIの提案も含めて)
  • ・肌にトラブルがあるなら、まず健康な状態に戻すことを目的に切り替える
  • ・そのときは、情報を集める前に、肌を見てもらえる相手を先に決める
  • ・皮膚疾患の可能性があるとき、悩みが心の負担になっているときは、医療につなぐ

肌そのものではなく、目に入ってくる情報のほうをどう見極めるか——AIが挙げた根拠の確かめ方や、発信の出どころによる読み分けについては、別記事「エステ講師に聞く、生成AIの美容情報はどこまで信じていい?」でまとめています。

AIに肌のことを相談すること自体を、永松氏は止めませんでした。楽しみとして美容を選ぶ場面なら、むしろ全力で楽しめばいいという立場です。線が引かれるのは、肌にトラブルがあるとき、そして外したときに取り返しがつかないときでした。そこで必要になるのは、より多くの情報ではなく、自分の肌を見てもらうことです。AIが受け取れるのは、あなたが言葉にした肌までであって、あなたの肌そのものではありません。

取材日:2026年8月20日

取材写真:Zoom取材時のスクリーンショット(編集部)/サロン・スクールの写真:永松麻美氏提供

編集プロダクション雨輝

この記事を書いた人

編集プロダクション雨輝

2014年創業。取材・執筆、編集、校正・校閲、ファクトチェックなど、コンテンツ制作を幅広く手がける編集プロダクション。正確性と信頼性を重視し、専門家への取材や一次情報の確認を通じた、質の高い情報発信に取り組んでいる。https://amaterupro.jp/

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