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教育のプロに聞く、正解のない子育てにAIをどう使うべきなのか

教育のプロに聞く、正解のない子育てにAIをどう使うべきなのか

公開日 更新日

〜使うのは執筆や資料づくりまで。子育て相談にだけは使わないと決めている〜

生成AIを毎日使いこなしている専門家が、いちばん本業に近い仕事にだけはAIを使いません。そんな線引きをしている人がいます。(一社)教育デザインラボ代表理事の石田勝紀氏は、ChatGPT、Gemini、Claudeの3種類すべてに課金し、執筆にも講演資料づくりにもAIを使っています。

それでも、保護者から寄せられる子育ての相談にAIを使うことは「全くない」と言い切ります。なぜなのか。そして保護者がAIに子育てを相談するとき、質問をどう書けばよく、出てきたものをどう受け止めればよいのか。10年にわたって保護者の相談に答えてきた石田氏に、AIに渡す仕事と渡さない仕事の分け方を伺いました。

石田 勝紀

石田 勝紀

(一社)教育デザインラボ代表理事。都留文科大学国際教育学科元特任教授。20歳で起業し学習塾を創業。34歳で、都内私立中高一貫校の常務理事として学校改革を実践。現在は全国でカフェスタイル勉強会「Mama Café」を年間130回以上主催するなど、親向けの活動多数。『東洋経済オンライン』の連載は累計1.4億PV超。『音声配信Voicy』子育てランキングで2年連続第1位。著書は「子どもを育てる7つの原則」など国内外47冊出版。

「恐ろしいほど生産性が上がる」AI、それでも相談には使わない理由

石田氏は生成AIを毎日使っています。ChatGPT、Gemini、Claudeの3種類すべてに課金し、執筆で使い、講演の資料づくりで使い、アンケートの集計と解析でも使います。ただし、書かせるという使い方はしていません。

そのまま執筆を全部AIに書かせると、無難なものしか出てきません。私にはある種の教育の考え方のベースがありますから、それをもとにしながら、内容を整えたり、新しい視点を得たりと、対話をしながらAIを利用しています。

講演の資料も同じです。中身のベースは自分で作り上げたうえで、整った形にするところにAIを使います。この使い分けで「恐ろしいほどの生産性が上がっている」というのが石田氏の実感です。

ところが、石田氏の活動の中心にある仕事にだけは、AIがまったく入ってきません。保護者から寄せられる子育ての相談です。

相談の場面でのAIの使い方は、私はしていません、全く。というのも、もう38年やっていますので、私の中に人工知能ではなく、天然知能というものが入っています。そちらの部分で、ほぼ解決ができています。

経験があるから要らない、という話にも聞こえますが、石田氏の説明はそこで終わりませんでした。相談に来る保護者が本当に求めているものが、答えそのものではないからです。

ママさんたちはハウツーを求めているようでいて、実は自分の心を安定させたい、安心したいというのが最大の目的なんです。そこの部分のケアは、やはり人間の経験値に基づいて話をして、ある声で、あるトーンで語りかけることで安心させていくところが圧倒的に効果があり、結局そのほうが子育てはうまくいきます。

ハウツーだけを並べるのならAIでもよいのかもしれない、と石田氏は言います。ただ、ハウツーには当たり外れがあります。100人いれば100通りのやり方があるので、手順を渡すこと自体が目的にはなりません。

とはいえ、石田氏がAIを使う相談もあります。線引きははっきりしていました。

AIを使うとしたら、専門的な知見が必要な場合です。たとえば発達障害に関わる相談や、精神科に通っているお子さんの相談も中にはあります。不登校も絡んで、意外と多いんです。そうしたときに、専門的な知見としてどのように回答し、対応すればよいのかは私の中にはありませんので、そうした点をAIに聞いて、いろいろな事例を出してもらっています。

つまり石田氏の線引きは、次のように整理できます。

  • ・AIに渡す=執筆の整え、講演資料の形づくり、アンケートの集計と解析
  • ・AIに渡す=自分の経験の外にある専門領域(発達障害、医療機関にかかっている子どもの対応など)の事例収集
  • ・AIに渡さない=通常の教育相談・子育て相談。安心してもらうことが目的の場面
20歳で塾を創業し、34歳から7年間、中高一貫校の常務理事を務めた。

自分の考え方を映した「AI石田」

相談にAIを使わない石田氏ですが、保護者にはAIを使うよう勧めています。そのために用意したのが、自分の考え方を読み込ませたAIでした。石田氏はこれを「AI石田」と呼んでいます。

私の考え方のベースを全部読み込ませてありますので、それに基づいて答えが出てきます。ですから、「石田先生と同じことを言っています」とか、「それはそうですよね」という話をしたりしています。

なぜ、自分に聞かずAIに聞いてもらう仕組みをつくったのか。理由は、質問する側の心理にありました。

いちいちこんな質問をすると失礼かな、と思う方もいらっしゃいます、相談するときに。ですから、そういう場合はAIを使ってみてください、とお伝えしています。

聞くほどのことではない、と本人が思ってしまう質問こそ、答えの届かないまま残ります。その受け皿として置かれているのが「AI石田」だということです。

ただし石田氏は、通常のAIをそのまま使っても「無難なものしか出てこない」とも言います。差がつくのは、質問の書き方でした。

石田氏は音声配信Voicyでも保護者からの質問を受け付けており、そこで求めている書き方が、そのままAIへの質問の型になるといいます。

そのときの状況を説明して、質問は何かをきちんと入れてください、とお伝えしています。あれがある種のプロンプトのようなものですから、それをAIに入れると、より的確な答えが出やすくなります。

子どもの状況と、質問。この2つを分けて書きます。うまくいく方法を尋ねるのではなく、その子がどういう子で、いま何が起きていて、何が苦手なのかという前提条件を先に渡します。順番にすると、次のようになります。

  • ・子どもの状況を書く(学年、性格、いま起きていること、苦手なこと)
  • ・聞きたいことを、状況とは分けて1つ書く
  • ・返ってきた答えのうち、自分の子に合いそうな部分だけを取り出す

AIの答えの受け止め方は「実験」

では、AIから返ってきた答えを、保護者はどう扱えばよいのでしょうか。石田氏の答えは、著書『子どもを育てる7つの原則』の第1の原則から来ています。

子育てに絶対的な正解はなく、試行錯誤の連続である。これが第1の原則です。つまり、1つのエビデンスがあったとしても、そのやり方が全員に通用するなんてありえません。その特殊な条件に合った子であれば、うまくいくかもしれません。ということは、やってみないとわからないのです。

だから石田氏は、出てきたアウトプットに対して「試してみて」ではなく、あえて「実験してみて」と言い方を変えているそうです。

実験ですから、失敗してもいいんです。「やってみてうまくいかないんです」と落ち込む親御さんがいらっしゃいますが、実験であれば失敗してもよく、ただそのやり方がこの子に合っていなかったというだけの話です。そうやって試行錯誤をして、実験をしてみるなかで、だいたい3つ4つやると当たります。

言葉を1つ変えるだけの話に見えますが、保護者が受ける打撃はまるで違います。「試す」は当たり外れの話ですが、「実験」は外れることが前提に組み込まれています。外れたときに責められるのは、親でも子でもなく、やり方のほうです。

根拠を示す形で答えを返すAIが増えるなかで、石田氏はその根拠自体にも距離を置いていました。

エビデンスというのは、本当に怪しいものです。自分に有利なエビデンスは、問いかけ方や母集団のつくり方次第でできてしまいます。コーヒーが体にいいという説と、体に悪いという説の両方があるくらいですから。

だから根拠を無視してよい、という話ではありません。ここで石田氏が言っているのは、1つの根拠に縛られず、本質的な視点で見るべきだということです。実験してみて、という返し方は、この姿勢とつながっています。

子ども自身がAIをどう使うかについては、「教育の専門家が語る、AIで伸びる子と使われてしまう子の分かれ目」にまとめています。

家庭に用意しておきたい「2段構え」

AIやSNSをめぐって家庭が気にすることは多くありますが、石田氏が情報リテラシーの中心に置いているのは1点だけでした。

一番は、犯罪に巻き込まれないようにということです。ただのガセネタを信じてしまった、というような被害の大きくないものであれば、学びの一種として、次は騙されないようにしようとなります。ですが、犯罪に巻き込まれると、被害がかなり大きくなりますので。

嘘の情報につかまること自体は、次に生きる経験として扱います。そのうえで、取り返しのつかない被害だけは避けます。優先順位がはっきりしています。

そして石田氏は、この役割を子ども側だけに求めていません。スマートフォンやパソコンを渡す側、つまり親の責任として語っていました。

親も渡している以上は、その責任を取らなければなりません。やはり無責任はいけません。渡したら勝手にやってください、というのはおかしな話ですから。

スマートフォンやパソコンを渡すときに、どういう犯罪があるのかを1度話しておきます。調べ方そのものはAIに聞けばよく、それを子どもと共有すればよい、と石田氏は言います。ただ、それだけでは足りません。子どもは伝えきれなかったり、忘れてしまったりするからです。

子どもとの雑談がパイプラインになります。雑談にすると、子どもは結構話しやすいんです。そういうことを日頃からずっと続けることで、子どもが何かあったときに相談できるという経路をつくっておいてください、という話をしています。

新しい技術には必ず負の側面が出てくる、と石田氏は見ています。「光が差せば影も濃くなる」という言い方でした。だからこそ、あらかじめの予防と、起きたあとの相談経路。この2つを家庭に置いておきます。

  • ・渡すときに、どんな犯罪があるかを子どもと一緒に調べて共有する(予防)
  • ・日頃から雑談を続け、おかしいと思ったらすぐ言える関係を保つ(相談経路)

この2段構えを押さえておけば「相当数の被害を抑えられる」というのが石田氏の見立てです。そのうえで、あとは楽しく使えばいい、とも話していました。

なお石田氏によると、学校でも情報リテラシーの授業は行われており、外部から講師を招くケースもあるようです。石田氏が調べた範囲では、私立の多くで実施されており、公立でも実施している学校があるとのことでした。

石田氏が取材するMama Caféの様子

AIに渡せる仕事と、渡さない仕事。石田氏の線引きは、難しいか易しいかではなく、相手が何を求めて来ているかで引かれていました。答えが欲しいのか、安心したいのか。前者ならAIでも足りますが、後者はまだ人の側に残っています。保護者がAIに相談すること自体を、石田氏は止めません。止めないかわりに、状況と質問を分けて書き、返ってきた答えは実験として試します。その使い方を渡しています。

取材日:2026年8月19日

編集プロダクション雨輝

この記事を書いた人

編集プロダクション雨輝

2014年創業。取材・執筆、編集、校正・校閲、ファクトチェックなど、コンテンツ制作を幅広く手がける編集プロダクション。正確性と信頼性を重視し、専門家への取材や一次情報の確認を通じた、質の高い情報発信に取り組んでいる。https://amaterupro.jp/

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