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教育の専門家が語る、AIで伸びる子と使われてしまう子の分かれ目

教育の専門家が語る、AIで伸びる子と使われてしまう子の分かれ目

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〜分かれ目にあるのは、英語でも数学でもなく「国語力」〜

子どもにAIを使わせてよいのか。多くの家庭がまだ答えを出せずにいる問いですが、現場ではもう答えが出ているのかもしれません。スマートフォンを持っている子どもは、ほぼAIに触れています。そう話すのは、20歳での学習塾創業から私立中高一貫校の経営、保護者向けの活動まで、38年間にわたって教育の現場に立ち続けてきた石田勝紀氏です。

石田氏が見ているのは、使う・使わないという線引きではありません。使ったときに加速度的に伸びていく子と、AIに使われる側へ回ってしまう子との差です。何がその差を生むのか。学校の評価や入試はどこへ向かっているのか。家庭が子どもとAIの距離をどう取ればよいのかを伺いました。

石田 勝紀

石田 勝紀

(一社)教育デザインラボ代表理事。都留文科大学国際教育学科元特任教授。20歳で起業し学習塾を創業。34歳で、都内私立中高一貫校の常務理事として学校改革を実践。現在は全国でカフェスタイル勉強会「Mama Café」を年間130回以上主催するなど、親向けの活動多数。『東洋経済オンライン』の連載は累計1.4億PV超。『音声配信Voicy』子育てランキングで2年連続第1位。著書は「子どもを育てる7つの原則」など国内外47冊出版。

すでに多くの子が使っているAI

子どものAI利用は、家庭ごとに温度差の大きいテーマです。触らせていないという家庭もあれば、気づいたら使っていたという家庭もあります。石田氏は保護者向けの勉強会や音声配信で日々こうした質問を受けていますが、実態はすでに一方へ傾いていると見ています。

もうかなりの数の子どもが使っています。スマートフォンを持っている子は、ほぼ使っています。ただ、検索代わりに使っている印象が一番大きいと思います。

どれくらいの子が使っているかという広がりそのものより重いのは、後半の一言のほうかもしれません。検索代わり。つまり、調べ物の道具として使われている、ということです。

調べ物の道具として使う分には、便利で済みます。問題は、返ってきた答えをそのまま受け取ってしまったときに起きます。生成AIは、事実でないことをもっともらしい文章で書いてしまうことがあるからです。

使っているか、使っていないか。家庭の関心はそこに向きがちですが、石田氏の視線はもう1つ先を見ています。どう使っているか、です。

相談を受ける子どもは5歳〜高校生、中心は小学生だといいます。

AIで伸びる子と、使われる子の分かれ目

石田氏が子どものAI利用を教育の観点から見たとき、いちばん強く出てくるのがこの二極化の話でした。同じツールを渡しても、結果は正反対の方向へ開いていくといいます。

そもそも考える力、思考力と言っていますが、国語力と言ってもいいと思います。これがある人はAIを使うと加速度的に伸びていきます。ない人がAIを使うと、AIに使われる側になっていきます。かなりの二極化が、もっと進行していきます。

ここでいう国語力は、漢字や文法の知識ではありません。石田氏が挙げたのは、質問する力、出てきたものを読み解く読解力、そしてそれに対して問題意識を持ち、問いかけて修正していく力です。疑問を持つ力、と言い換えてもいいでしょう。この往復ができる子にとって、AIは学びを深める相手になります。

出てきたものをそのままコピペで貼り付けるような思考停止の状態だと、結局そこでハルシネーションに全部引っかかってしまいます。形としては出ているかもしれませんが、おそらく薄っぺらいもので終わり、そういうものは評価されないということが、これから明確になっていくと思います。

AIを使ったかどうかではなく、使ったあとに何をしたか。そこが評価の分かれ目になる、という見立てです。家庭で見るとしたら、次の3つが手がかりになります。

  • ・子どもがAIに何を聞いたか(質問の中身を一緒に見る)
  • ・返ってきた答えを、そのまま使ったのか、直したのか
  • ・答えのどこがおかしいと思ったか(違和感を言葉にできているか)

なお、石田氏はこの二極化が加速度的に進むという部分については、「あくまで予測ではあるのですが」と留保をつけています。ただし、二極化そのものは「もう今もすでに始まっている」という認識でした。

そうした中、先日発表された学習到達度調査「PISA2025」では、日本がOECD加盟国の中で3分野すべて1位となったことが大きく取り上げられました。一方で、注目すべきなのが「読解力」です。日本では読解力の低下が見られ、これは日本だけの現象ではなく、世界各国でも同様の傾向が表れています。

さらに結果を詳しく見ていくと、単純に「全体の読解力が一様に下がった」というわけではありません。上位層の水準はそれほど大きく変わっていない一方で、下位層が増えたことによって、全体の平均値が押し下げられていると言われています。データによっても二極化がさらに進行していることが裏付けられた結果となりました。

「思考力を試す問題」に舵を切る入試

暗記で解ける問題なら、AIに聞けば済んでしまいます。だから入試は変わるべきだ、という議論もよく聞かれます。しかし石田氏は、変わるべきだという話ではなく、すでに変わっていると話します。例に挙げたのは、大学入学共通テストの英語でした。

共通テストの英語を見てみるとわかるのですが、単語は全部わかりやすい単語で書かれています。ですから、読めないということはありません。ですが、考えないとわかりません。こういう症状の人がいて、この薬を飲んでいいかどうかを判断せよと。薬の説明書が英語で書いてあるわけです。判断能力が要求されます。暗記ではありません。

こうした出題は英語に限らず、各科目に入ってきていると石田氏は言います。学校の授業も2020年度以降、小学校から順次同じ方向へ動いており、評価の軸そのものが変わっているとのことでした。

学校の評価の中でも、思考力、判断力、表現力というのが主軸に入っています。各科目での知識・技能は、そこに後から付随してついてきます。あとは主体的な学び。この3段構えで評価されていて、最後に5段階評価に換算していくという成績のつけ方になっています。

知識だけでは解けない問題が増えています。これは石田氏にとって「いい流れ」です。そしてこの流れは、AIをめぐる二極化の話とちょうど重なります。考える力を測る方向へ学校が動いているのなら、AIを使って考える力を鍛えた子は伸び、AIに考えさせた子は伸びない、という構図になるからです。

一方で、入試そのものにAIが持ち込まれる可能性については、石田氏は否定的でした。普段の学習でタブレットを使う程度にとどまり、入試で使わせることは「多分やらない」という見方です。

なお、保護者自身がAIとどう付き合うかについては、別記事「教育のプロに聞く、正解のない子育てにAIをどう使うべきなのか」で伺っています。

10年間で1万8千人の保護者から、個別の相談を受けてきたといいます

それでも「今から使わせるべき」という結論

考える力がないままAIを渡すと、AIに使われる側になってしまいます。そう聞くと、力がつくまで触らせないほうがよいように思えます。ところが石田氏の結論は逆でした。

使う、使わないと言ったときには、今から使ったほうがいいと思います。子どもたちは、どうせそういう時代になりますから。ただ、それと同時に二極化していきます。AIと友達になれる人と、AIに使われる側になってしまう人の2つに分かれていきます。

学校がアナログを基本にするのなら、それ以外の場面ではむしろAIを絡めてしまったほうが健全ではないか、というのが石田氏の考えです。危険なものを先に学んでしまえる、という理由からでした。石田氏の見るところ、子どもは大人が知らないところで使い方を覚え、リテラシーを上げていきます。

そのうえで石田氏は、いまの子どもとAIの関係を「序章」と表現しました。

今はちょこちょこ対話をして、返してくれて嬉しいとか、共感してくれて嬉しいとか、調べてみてこれは楽だなとか、そんなレベルで終わっていると思います。私は、それぐらいの感覚を味わっていくのが、この時代にはちょうどいいのではないかと思います。

共感してもらえると嬉しいものです。それがモチベーションにつながる可能性もあると石田氏は言います。たとえば不登校の子がAIとの対話で勇気を得て学校へ行き出したケースは「絶対あるはず」——ただし、これはデータを持っていない前提での話だと、石田氏自身が断っていました。1人でもそういう子がいたのなら、AIの価値はあったということです、と続けます。

同時に石田氏は、その共感が擬似的なものであることも押さえておくべきだと話します。

そこに心があるわけではありません。相手は人間ではないので。こちらが共感してもらっていると感じているだけなので、ある意味、擬似的なものではあります。

大人は、心と心の交流をアナログで積んできた経験があります。その良さを知っているからこそ、擬似的なものと区別がつきます。けれども子どもは、まだその経験そのものが浅いのが実情です。だからこそ学校や家庭で、アナログの交流の場を意識して残しておく必要があります。石田氏は、デジタルが進めば進むほどアナログへの揺り戻しが来ると予測しています。

  • ・休日は、意識してデジタルから離れる時間をつくる(キャンプ、自然の中で過ごすなど)
  • ・人と直接会って、遊ぶ・笑うといった体験の機会を確保する
  • ・AIとの対話で得られる共感と、人からの共感は別物だと家庭で話しておく

英語でも数学でもなく、国語。石田氏が挙げたのは、学校の科目としての国語というより、問いを立て、返ってきたものを読み解き、おかしいと思ったら疑う力でした。この力がある子にとってAIは学びを加速させる相手になり、ない子にとっては答えを写す装置で終わってしまいます。家庭が向き合うべきなのは、使わせるかどうかの判断より、子どもがAIに何を聞き、返ってきた答えをどう扱っているかを見ておくことなのかもしれません。

取材日:2026年8月19日

写真:Zoom取材時の画面より(編集部)

編集プロダクション雨輝

この記事を書いた人

編集プロダクション雨輝

2014年創業。取材・執筆、編集、校正・校閲、ファクトチェックなど、コンテンツ制作を幅広く手がける編集プロダクション。正確性と信頼性を重視し、専門家への取材や一次情報の確認を通じた、質の高い情報発信に取り組んでいる。https://amaterupro.jp/

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