
米ニューヨーク州の裁判所がAIの規則を施行 AIで作った書類も、確かめる責任は署名した人に
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米ニューヨーク州の裁判所が、AIを使って裁判の書類を作ることについての規則を、2026年6月1日に施行しました。(出典①、出典②)10月5日には、米国の法律専門紙「ニューヨーク・ロー・ジャーナル」が、家族法の弁護士に向けた専門家の寄稿でこの規則を取り上げています。(出典③)
規則は、AIの使用を禁止すべきではなく、開示も求めるべきではないとしました。一方で、各裁判所が採用できるモデル規則では、書類に署名した人が、架空の判例などが無いことを自分で確かめたと保証します。AIを使ったと申告するかどうかにかかわらず、中身の責任は署名した人にあるという考え方です。
この記事でわかること
- ・ニューヨーク州の裁判所が施行したAIの規則の中身
- ・署名で「確かめた」と保証させるモデル規則と、判事ごとの規則
- ・AIで作った書類を、出す前に確かめる方法
規則はAIの使用を禁止せず、使ったことの開示も求めない
規則を定めたのは、州の首席行政判事が2026年3月25日付で出した行政命令です。首席行政官の規則に「第161部 AI技術の使用」を加え、6月1日に施行しました。対象は州の統一裁判所システム(Unified Court System)に属するすべての裁判所で、民事と刑事の両方に適用されます。
規則が対象にする「書類」は、準備書面(裁判で自分の主張をまとめて出す書面)や宣誓供述書など、弁護士や訴訟の当事者が裁判所に出すために作る文書です。証拠として出す資料は含みません。証拠と、それにかかわるAIの使い方には、別の考え方と要件が当てはまるためです。
方針として規則は、書類を出す人の義務と責任に沿っている限り、AIの使用を禁止すべきではないとしました。AIを使ったことの裁判所への開示も、求めるべきではないとしています。書類を出す人の義務と責任は、AIを使ったかどうかにかかわらず、すでにすべての書類に及んでいるためです。
モデル規則では、署名が「確かめた」という保証になる
規則は、各裁判所が独自にAIの使い方についての規則を設けてよいとしています。設けるのが適切だと判断した裁判所には、規則の付録に載せたモデル規則(ひな形として示した規則)を採用するよう勧めています。
モデル規則はまず、AIを使う弁護士や当事者に、そのAIの機能と限界を理解していることを期待しています。AIは捏造した情報や、判例(過去の裁判で示された判断)などについての架空の引用を示すことがあり、一般に「ハルシネーション」と呼ばれているとも注意しています。
そのうえでモデル規則は、AIを使って書類を作った人に、書類を注意深く確認し、捏造や架空の判例、法令などが含まれていないことを自分で確かめるよう求めています。対象は裁判所に出す書類だけでなく、同じ事件のほかの当事者に送る書類にも及びます。
書類に署名すると、この確認をしたことと、捏造や架空の内容が無いことを保証したことになります。この要件を満たしていないと裁判所が判断すれば、制裁やその他の是正措置の対象になりえます。署名にともなう責任そのものは、この規則の前からありました。モデル規則が挙げる州の既存の規則でも、書類に署名して裁判所に出すと、重要な事実についての虚偽や、根拠のない法的主張が無いことを保証したことになります。
判事によっては、AIを使ったかどうかの開示を求める
署名で確認を保証させる仕組みは、各裁判所がモデル規則を採用したときに働くものです。州全体の方針として定めたのは、AIの使用を禁止すべきではないことと、開示を求めるべきではないことでした。
一方で、判事ごとに定める法廷の規則では、開示を求める例もあります。ニューヨーク州キングス郡の裁判所のシャロン・ボーン=クラーク(Sharon Bourne-Clarke)判事の規則は、2026年9月16日から適用されています(2026年10月6日時点)。(出典④)
この規則では、弁護士はすべての提出書類に、AIを使ったかどうかの開示と、法的な主張や引用した判例などを自分で確かめ、架空の判例に頼っていないことの確約を付けなければなりません。
AIで作った書類は、出す前に原典で確かめる
規則が注意しているとおり、AIは判例などについて架空の引用を示すことがあります。裁判に限らず、AIで作った文書を社外に出すときは、次の3つを確かめておきましょう。
- ・原典を開く:AIが挙げた判例・法令・論文・統計は、原典を開いて、実在することと中身を確かめます。AIの説明だけで済ませないことがポイントです
- ・確かめた範囲を残す:確かめた箇所と、まだ確かめていない箇所を分けて記録しておきます。後から読み直す人が、どこを見ればよいかが分かります
- ・責任を持つ人を決める:確かめる担当者を決め、その人が中身に責任を持ちます。ニューヨーク州のモデル規則で、署名した人が責任を負うのと同じ考え方です
AIは、書類を作る手間を減らすのに役立ちます。ただ、AIを使ったかどうかにかかわらず、中身を確かめるのは書類を出す人の仕事です。
まとめ
2026年6月1日に施行されたニューヨーク州の裁判所の規則は、AIの使用を禁止すべきではなく、使ったことの開示も求めるべきではないとする一方で、書類を出す人の義務と責任は、AIを使ったかどうかにかかわらず変わらないという考え方です。
各裁判所が採用できるモデル規則では、署名した人が、捏造や架空の判例が無いことを自分で確かめたと保証します。判事によっては、AIを使ったかどうかの開示を求める例もあります。AIで作った文書を外に出すときは、原典を開いて確かめ、責任を持つ人を決めておきましょう。
出典
- Part 161. Use of Artificial Intelligence Technology|① New York State Unified Court System
- Administrative Order of the Chief Administrative Judge of the Courts, AO/75/2026|② New York State Unified Court System
- Your Brief Has Been Hallucinating—NY’s AI Rule and the Nondelegable Duty to Verify for Family Law Attorneys|③ Bettina D. Hindin(New York Law Journal・Law.com)
- Hon. Sharon Bourne-Clarke|④ New York State Unified Court System
この記事を書いた人
Fact Check Lab編集部
世の中で話題になっている情報のみならず、生成AIの精度やハルシネーションの検証・分析を行う編集部。誤情報は、意図的な嘘だけでなく、事実の一部が伝わる過程で欠け落ちたり、文脈から切り離されたりすることでも生まれる。だからこそ、疑うことよりも確かめることを大切にする。不偏不党の精神で発信元をたどり、一次情報にあたる。



