Fact Check PRO
熊本地震、SNSで見た被災地と現地には差があった―災害時の情報をどう受け取るか―

熊本地震、SNSで見た被災地と現地には差があった―災害時の情報をどう受け取るか―

2026,08.17

コラム
徳山 理恵

徳山 理恵

1級危機管理士/防災士/アンガーマネジメントコンサルタント。危機管理・防災、災害時の初動対応、組織内コミュニケーションを専門領域とし、自治体、企業、医療機関、福祉施設、教育機関などで研修・講演、執筆・監修を行う。 自身も被災した熊本地震では、避難所運営、被災者支援、支援の受け入れ対応に携わり、災害時の現場対応を実務として経験。自然災害に加え、ハラスメント、情報共有の不備、組織内トラブルなど日常に潜むリスクにも着目。現場経験と専門資格に基づき、生活者や組織が実際の備えや判断に活かせる、正確で実践的な情報提供を重視している。

7月28日に発生した令和8年熊本地震[1]。その2日後の30日から私は被災地に入り、支援に関わりながら現地を見てきた。私自身、10年前の2016年に起きた熊本地震でも被災し、その後仮設住宅が解散するまで長く支援活動に携わってきた。そうした経験も踏まえて改めて感じたのは、私たちが報道やSNSを通して見ている「被災地」と、実際の被災地は、必ずしも同じではないということだ。

もちろん、報道されている被害が間違っているわけではない。SNSに投稿される写真や声も、その場所、その瞬間の事実であることは多い。ただし、それは被災地の一部分を切り取ったものでもある。

同じ被災地でも、状況は一様ではない

大きな被害を受けた場所がある一方で、少し離れれば店が営業し、人が普段に近い生活を送っている場所もある。逆に、外から見ると大きな被害がないように見えても、家の中では家具が倒れ、片付けや生活再建に追われている人もいる。

業務用の調理場。加熱調理機器が傾いて倒れ、ボウルやバットが調理台の上や床に散乱している

[図1]業務用の調理場。機器が倒れ、調理器具が散乱したままになっていた(2026年8月1日、筆者撮影)

被災地を歩くと、倒壊した家屋が目を引くが、その数軒隣には一見被害がないように見える家屋が並ぶ。しかし、発災直後に命を守るために避難した人が帰宅したとき、家の中がどのような状況になっているのか想像できるだろうか。物が転倒し散乱しているだけではない。猛暑が続く中、ライフラインが止まった家の中では、冷蔵庫やごみ箱の中身の腐敗臭が満ち、掃除をしようにも断水で水が出ない[2]。そのような状況でも、必死に今できることをやっている人たちがたくさんいる。そして忘れてはならないのが、そのような状況を目の当たりにして、動けなくなっている人もいるということだ。

道路沿いで倒壊した木造家屋。屋根瓦が路上近くまで崩れ落ち、奥には外から見て被害のわからない店舗が建っている

[図2]道路沿いで倒壊した家屋。同じ通りには、外から見て大きな被害のない建物も並ぶ(2026年8月3日、筆者撮影)

倒壊した木造の建物。屋根が崩れ落ち、瓦や木材が敷地の外の地面まで散乱している

[図3]倒壊した木造の建物。屋根瓦が敷地の外まで崩れ落ちていた(2026年8月3日、筆者撮影)

画面越しに伝わりにくい「濃淡」

災害報道では、被害の大きな場所や目を引く映像が繰り返し伝えられやすい。その結果、受け手には「地域全体が同じ状態なのではないか」という印象が生まれることがある。反対に、復旧が進み始めた映像だけを見れば、「もう落ち着いた」と感じる人もいるかもしれない。だが現地では、被害の程度も、困りごとも、回復の速度も一様ではない。私は今回、その「濃淡」こそが、画面越しには最も伝わりにくいものだと感じた。

屋根にシートがかけられた住宅。立てかけられたはしごを人が上っている

[図4]屋根にブルーシートがかけられた住宅。はしごが立てかけられ、人が上り下りしていた(2026年8月3日、筆者撮影)

現地の状況は、場所によって違うだけではない。時間の経過によっても刻々と変わる。だからこそ、災害時の情報には「どこで」「いつ」の情報なのかという視点が欠かせない。

災害時に飛び交う情報を、3つに分けて考える

災害時には情報そのものが支援になる。だからこそ、飛び交う情報を、私はその性質から大きく3つに分けて考えている。

1.公的機関の一次情報と、専門家の発信

1つ目は、自治体や公的機関が発信する一次情報や、根拠となる資料やデータを明示した専門家の情報だ。避難情報、道路状況、支援制度など、行動を判断する土台になる情報である。ただし、災害時にはSNS上でさまざまな情報が急速に広がる。早く流れた情報が必ずしも正しいとは限らない。ここで注意したいのは、「早い情報=正しい情報」ではないということだ。

2.善意から広がる、正確ではない情報

2つ目は、「助けたい」という善意から広がる、結果として正確ではない情報だ。「○○が不足しているらしい」「この地域には支援が届いていないそうだ」といった投稿が、確認されないまま拡散されることがある。発信された時点では事実だったとしても、数時間後には状況が変わっている場合もある。災害時の情報には、いわば「賞味期限」がある。

3.混乱に乗じた、意図的な偽情報

そして3つ目が、混乱に乗じて意図的に流される偽情報だ。政府も、災害時のインターネット上の偽・誤情報が救命・救助や復旧・復興の妨げになりかねないとして、不確かな救助を呼びかける投稿などに注意を促している[3][4]。人の不安や「何かしてあげたい」という気持ちが、逆に利用されることがある。

難しいのは、善意の情報ほど疑いにくいことだ。「困っている人がいるなら広めよう」と思うのは自然な反応である。しかし、間違った情報が広がれば、必要のない場所に物資や人が集中したり、本当に必要な支援が見えにくくなったりすることもある。善意であっても、情報が正確でなければ被災地の負担になり得る。

情報を受け取ったときに確かめる3つのこと

だから私は、災害時に情報を受け取ったとき、「誰が発信したのか」「いつの情報なのか」「元の情報はどこにあるのか」の3つを確認してほしいと思う。特にスクリーンショットや転載だけを見て判断せず、可能であれば自治体や公的機関などの元情報までたどることが大切だ。政府広報でも、発信者や情報源を確認し、他の情報と比べて真偽を確かめることが勧められている[5]。

SNSは災害時の大きな力になる。現地の声を届け、必要な支援と人をつなぐこともできる。一方で、拡散の速さは、間違った情報も同じ速度で広げてしまう。

まとめ|立ち止まって確かめることも、災害支援のひとつ

被災地を支えるために必要なのは、「たくさん拡散すること」だけではない。一度立ち止まり、確かめてから伝えること。それもまた、私たち一人ひとりにできる災害支援の一つなのだと思う。

出典

専門家監修

専門家の“正誤判断”でコンテンツの信頼を確立

多ジャンルを網羅

200職種以上の専門家ネットワーク

AI引用・SEOにも強い

E-E-A-T対策に特化した成果につながる人選

もっと見る

関連記事